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東京都心5区のオフィス空室率が2%台に突入:2026年の供給マップと投資判断

※ 本記事は情報提供を目的とした個人的な分析であり、特定の投資商品の売買を推奨するものではありません。投資・税務・法務の判断は、公的資料の確認と専門家への相談の上、ご自身の責任で行ってください。記事の執筆時点以降、市場状況が変更される場合があります。

東京の都心オフィス市場は、2023年の「大量供給」懸念を乗り越え、2026年現在、非常にタイトな局面を迎えています。賃料、空室率、そして大規模開発の竣工が、これまでのサイクルとは異なる**「超・二極化」**のパターンを生み出しています。

単に「空室率が低いから市場全体が好調だ」と結論付けるのは早計です。データが示す現実は、「入ろうとしても空きがないビル」と「賃料を下げても埋まらないビル」の冷酷な格差です。本日は、三鬼商事の2026年第1四半期データを基に、都心5区の現状を解読します。


1. 2%台への回帰:遅行指標としての空室率をどう読むか

2026年3月時点で、東京都心5区の平均空室率は**2.22%**まで低下しました。これはパンデミック前の水準に肉薄する数字であり、2025年を通じて続いた改善傾向の結実と言えます。

しかし、私はこの数字を「祝辞」ではなく「警告」として捉えています。空室率は市場における最も遅い指標です。拡張需要や高スペック新築ビルへの吸収は既に動いており、数字がそれを後追いしているに過ぎません。特に注目すべきは、「成約賃料(実質賃料)」の上昇です。フリーレント期間が短縮され、オーナー側の交渉力はポストパンデミックで最大のピークに達しています。

東京都心5区 オフィス空室率の推移(三鬼商事データ) 単位: % (2023年1月 \~ 2026年3月)

0% 2% 4% 6%

2023.01 2024.01 2025.01 2026.03

2.22%

2. エリア別分析:5つの区、5つの異なる物語

都心5区は決して単一の市場ではありません。各エリアが独自の需給サイクルを持っています。

1. 千代田区:盤石の「制度的モート」 丸の内・大手町を擁する千代田区は、ボラティリティが最も低いエリアです。官公庁や伝統的な大企業の本社需要が支えとなっており、新築Aクラスビルはほぼ満室。ダウンサイドリスクに対する防御力が最も高いエリアです。

2. 渋谷区:IT・クリエイティブ需要の心臓部 5区の中で最も低い空室率を記録し続けているのが渋谷区です。「渋谷サクラステージ」などの大規模開発も竣工と同時にIT企業によって吸収されました。優秀な人材を確保するための「職住近接」と「街のブランディング」を重視する企業が、高い賃料プレミアムを支払っています。

3. 港区:大量供給のテストベッド 虎ノ門・麻布台ヒルズを含め、近年最も圧倒的な供給が行われたエリアです。2023年の供給過剰懸念は強かったものの、2026年現在、ランドマークビルは順調にリーシングを完了しました。ただし、新築への移転に伴い発生する「二次空室(既存ビルの空き)」の解消が課題として残っています。

4. 中央区・新宿区:実需の再編 金融の拠点である中央区と、交通の要衝である新宿区は、現実的な賃料水準を求める企業からの安定した需要があります。特に新宿区は、西新宿エリアの老朽化ビルの建て替えが今後5〜10年の大きな焦点となります。


3. 2026年の投資判断における3つの重要ポイント

今日のデータから読み取るべき「罠」とは何でしょうか?

  • 「Flight to Quality」の加速: テナントは安い床ではなく、「人材を呼べる高機能な床」を求めています。平均空室率は低くても、古くて狭いビルのリーシング期間は長期化しています。
  • 供給パイプラインの空白期: 2023年、2025年の供給ピークを過ぎ、2026年後半以降は新築供給が相対的に落ち着きます。これにより、既存Aクラスビルのオーナー優位がさらに強まるでしょう。
  • ハイブリッドワークの成熟: 空室率は低いものの、1社あたりの床面積は最適化されています。面積の広さよりも、「人間中心のデザイン」や「コラボレーションスペース」の質が賃料を決定する時代です。

4. 結論:データは「過去」ではなく「意図」を読むためにある

投資家は、以下のルーチンを推奨します。

  1. 三鬼商事の月次レポート: 空室率と平均賃料のベンチマークを確認。
  2. REINSとのクロスチェック: 実際の取引市場の熱感を把握。
  3. 大手ディベロッパーのIR資料: 今後5年の供給パイプラインをマッピング。

2026年の東京オフィス市場は、単なる「回復」ではなく「質的な再編」の時期です。 資産配分を調整する際は、「5区」という名前に頼るのではなく、「人材を引き寄せるハードウェア」かどうかを最優先に評価すべきです。

データ鮮度(2026年4月): BOJ政策金利 0.75%、10年物JGB ≈ 2.43%、TSE REITインデックス ≈ 1,916、東京5区空室率 2.22%(三鬼商事 Q1 2026)、Q1 2026インバウンド観光客 1,068万人(JNTO)。投資判断前にリンク先の最新データを必ずご確認ください。

Investor Action: セッション要約と点検

  • 需給: 三鬼商事のデータで、ターゲット区の空室率が2%を下回っているか、募集賃料が「実質(Effective)」ベースで上昇しているかを確認してください。
  • 極化: 新築ランドマークへテナントが移転した後の、周辺Bクラスビルの「二次空室」リスクを現地で必ずチェックしてください。
  • 収益: 表面上の賃料に惑わされず、フリーレント期間を除いた実質収益を算出してください。

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免責事項:本記事は情報提供および教育目的のみで作成されたものであり、投資助言、法的助言、税務指導を構成するものではありません。いかなる財務上の決定を行う前にも、必ず資格を有する専門家にご相談ください。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。


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著者について

GSF author

Joseph (GSF) は東京・日本橋から、東京不動産、J-REIT、日韓マクロ動向を発信しています。

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